木軸構造の基礎知識:耐震構造計画 1)地盤を良く知る
地形や地盤が原因で、やっと手にした住まいがダメージを受けてしまったなど、トラブルが散見されます、そうならないために、地形や地盤の情報を集め地盤を知ることは、住まいを安全に導き、安全な暮らしを保証する第一歩と言えるでしょう。
地形、地盤のトラブルである地盤沈下や不同沈下(地耐力の不足・地盤の不均一性・偏荷重・基礎形式の違いなどによって生じる不均一な沈下)は次のような地形、地盤に原因があると言われています。
1)谷底地形で腐植土が堆積している地形、いわゆる軟弱地盤。
2)洪積台地と沖積低地の境にある地形。
3)造成地で 盛土が新しい地盤や盛土の厚みが変化している地盤。
★地盤沈下、不同沈下の置きやすい地形・地盤図→はこちら
特に、この数十年、戸建て住宅の願望は、住宅地の拡大を促し、そのため、住宅建設に良好な土地は減少し、かわりに軟弱地盤の造成や、安易な盛土造成が行われ、その結果、地盤沈下や不同沈下などのトラブルが発生するようになったと考えられるます。
■現地周辺調査と地質図
通常建築工事を行う際、現地調査と建設地の敷地内、何カ所かを選んで、土質調査(機械式ボーリング試験やスウエーデン式サウンデイング試験)を行います。
現地の状況を知るには、やはり現地調査が一番ですね、現地周辺に地盤沈下があるか、道路と敷地の高低差、川の有無、地形など、造成地なら擁壁の高さ、盛土の厚さ、盛土と切り土の境界、盛土の材料、造成時期等を確認することで、有る程度地盤を推察できます。
更に支持層(基礎の床付面)の確認には、今のところボーリング調査が一番確実といえます、しかし厳しい予算でボーリング調査を行うことは”ちょっと”という方には、低予算のスウエーデン式サウンデイング試験という方法もあります、この試験は地盤の許容地耐力を求める際の精度や、深い地層の地盤の情報を選る点で難がありますが、木造2階建て程度の住宅の地盤調査にはよく利用されています。
ほとんどの場合、これで基礎の設計は十分ですが、近年の宅地化の進行は、元の土地の土質や性質が考慮されないままの土地造成が行われているケースもあるようです。
敷地周辺を含めた土地がどんな土質で構成されているか、あるいはどんな歴史的変遷を経て現在に至ったかを知っていた方が、総合的で、精密な構造計画を立てられることは事実です、そのためには地質図を見ることをお勧めします。
地質図とは、「ある土地に露出する地層や岩石の種類と時代を示し、それらの新旧関係や分布の状態を色や模様で示した平面図で、正確な地形図の上に地核の最上部(地表ではない)の状態を一定の約束に従って表している。」を言います。
また、地質図には直下型地震を引き起こす断層も表現されています。
静岡県の地質図入手先:各地の図書館や郷土資料館)
★西部版
★中部版★東部版
★伊豆はこちらで!
軟弱地盤は敷地の地層が泥土、腐植土などで構成されていたり、沼やゆるい砂などから海岸を埋め立てた土地を一般に軟弱地盤と呼んでいます。
三角州や河川沿いの柔らかい土が堆積している土地のような軟弱地盤に家を建てると、地震のとき、家は大きく揺れる傾向がありますので対策が必要です。
土は粒径により分類され、粒径の大きい方より砂利・砂・シルト・粘土に分類されます。
砂利や砂は水の浸透性は高いが、粒径により地震時に液状化現象を起こす可能性があります。
液状化現象は昔川筋であったところが要注意、緩く堆積した砂地盤で低地や地下水位面が地表面に近いところでは、地震時に砂が水によって流動化し地盤が支持力を失いやすいからです。
他方シルトや粘土は水の浸透性が悪いが、長時間をかけて圧密沈下が進行すると言われています、粘土層については、3)造成地地盤で詳しく述べます。
やっかいなのは腐植土、腐植土は植物(湿地性植物)が分解して土になったもので、だから繊維質が多い分、圧縮性が高い、ほとんど水分と言って言いほどの土、現在落ち着いていても、新たに荷重が加わればすぐに反応し、沈下を起こしてしまう、その上、近隣の影響(盛り土、地下水位の変化)も受けやすいといわれている。
腐植土は谷筋、特に、大きな河川の支流の谷は注意が必要、谷の出口が洪水時の堆積土でふさがれて植物が繁って腐食土層が形成されていることが多いから。
腐植土の厚いところは表層改良は向かないことが多いので注意する必要がある、地中応力が深くまで影響し不同沈下の可能性があるからだ。
約200万年前から1万年前の洪積時代に堆積して出来た地層は洪積層と呼ばれ、台地や丘陵地の大部分がこの洪積層に属し、平野や低地のほとんどが、約1万年前から現在までの沖積時代に堆積して出来た地層は沖積層に属しています。
洪積層の地層の多くは、すでに先行荷重を長期間受けているので建物の支持層となると考えていいでしょう、とくに有名な関東ローム層は関東平野を構成し十分住宅の地盤になることは広く知られていますね。
一方沖積層は一般的に柔らかく地震に弱いとされています、沖積層でN値0〜3程度の柔らかい層を軟弱地盤と呼ぶことがあります、地耐力不足による地盤沈下や不同沈下の可能性が高いと言われているので、こんな土地の造成地は、特に入念な調査が必要でしょう。
同じN値でもどちらの層に属するかで、地耐力の計算の仕方が違ってきます、N値3の関東ローム層は洪積層に属するので地耐力は10トンぐらいあるのに、N値3の沖積層の地耐力は3トン前後と考えられている。
★地層の確認は地質図で確認しましょう。→こちら
湿潤な土地や傾斜地を宅地化するとき盛土をすることはよく行われますが、盛土が新しい地盤はどこに問題があるのでしょうか。
それは旧来の地盤や盛土自身が、建物や盛土の重さで圧密沈下を起こすからです、圧密沈下とは、土は荷重(圧)を受けることで、体積が徐々に減少(土に圧がかかることでより密実になるという意味でもある)します、これを圧密といいます、その圧密による土の沈下現象を圧密沈下といい、粘性土に多く見られます。
水田のような湿潤な土地の場合、表土の下にさらに軟弱な粘土層(保水層)が存在することがあり、水田の盛土は低盛土(1m以下)でもかなりの圧密沈下が起こりうる、粘土層の厚さ及び盛り土の高さが一様でも、地中応力は中央で大きく周辺で小さくなり、圧密による不同沈下の原因となり、さらに盛り土厚や粘土層の厚さが一様でないと、局部的な不陸が生じる。そしてその結果、建物に不同沈下が発生する恐れがあるのです。
圧密粘土層が存在する可能性があるのは沖積低地です、沖積低地であることが、地質図などにより解れば、地盤の状況を慎重に調査し、基礎の設計を検討する必要がありますね。
また、圧密沈下の大部分は盛土、自分自身によって起こります、なぜなら、盛土は敷地一杯に置かれ、単位面積当たりの荷重も軽量建物(住宅程度)より大きい場合が多いからです。
日本建築学会の小規模建築物基礎小委員会の調査(「造成地盤における戸建住宅の不同沈下事例と対策」建築雑誌2004/11 日本建築学会)によると、図(図1は不同沈下の割合を示したもの)のように、不同沈下の原因の約50%が造成地盤に起因していると報告しています。
同小委員会が収集した造成地盤における障害の事例はを整理すると、おおよそ5つのパターンに分類された。
1)盛土荷重による外周建物の引きづり込み。
2)切・盛り土地盤や盛土下部の旧来地盤の変形
3)盛土の材料や盛土自体の変形、あるいは不適切な埋設材料による変形
4)基礎工法の選定、あるいは設計ミス
5)欠陥擁壁、あるいは擁壁の背面土が不適切な材料、または転圧不足による変形。
★ 建物荷重による不同沈下・地盤自体の沈下・変形による不同沈下のパターン図→こちら
1)盛土荷重による外周建物の引きづり込み。
前述したが、圧密沈下の大部分は盛土、自分自身によって起こります。
30m×60m(擁壁で囲まれている)の範囲に高さ1mの盛土(16.5kpa)を置いた造成地を想定した時、盛り土の中央部、及び2階建ての軽量建物(住宅程度)の中央直下の地中応力(Δσ)の増加を見ると、図のように盛り土による応力増加は建物より、より大きく、より深くまで及ぶことが解ります。
特に地中応力は中央で大きくなり、周辺から、中央に向かって下がりやすい、これが周辺の建物の引きづり込む要因です。
3)盛土の材料や盛土自体の変形、あるいは不適切な埋設材料による変形。
コンクリートガラや、木の根やゴミ(工事業者がゴミを持ち帰らずに埋めてしまったような、意図的な悪質な例もあったようだ)が埋めれていたケースや、埋め立てに泥岩で行ったため、時間がたって泥岩が軟化して、局部的に沈下が発せしたケースなどがあった。
5)切・盛り土地盤や盛り土下部の旧来地盤の変形
雨水は1m3溜まると、1Tの重さのなります、擁壁、背面土の埋め戻しが不十分(転圧不足)だと、背面土が水一緒に流れたり、土が陥没し空洞ができてしまう、また背面土に泥岩を使用するとスレーキング現象で沈下してしまう、
造成地を注意深く観察すると、結構ありそうに思いますね。
問題は4)のケースです、情けない話しですが、設計者側の認識不足によるミスが原因のケースです、造成地盤であるという特殊性:地盤の不均質性を考慮しないで、自然の地盤と同様に基礎を設計してしまい問題が発生した。
十分な地盤調査の実施したうえで基礎の選定を行うという、プロとして当然の手続きを踏むことの重要さを再度再認識し、ユーザーの期待に応えなければならないと思います。
参考文献
□「造成地盤における戸建住宅の不同沈下事例と対策」建築雑誌2004/11 日本建築学会
□正規圧密粘土上の低盛土地造成の問題点と対策:吉見 吉昭(東京工業大学)
戸建住宅の基礎設計における現状と問題点:日本建築学会構造委員会
□地図で危険を知る、土質のチェックの手法:山田邦彦
地震に強い「木造住宅」の設計マニュアル:建築知識スーパームック1996・01・21
□図1の出展:地図で危険を知る、土質のチェックの手法:山田邦彦
□図2の出展:正規圧密粘土上の低盛土地造成の問題点と対策:吉見 吉昭(東京工業大学)
|